sparklersの日記

自己顕示欲と羞耻心と。私に都合のいい私の話。

ヤマシタトモコ HER の感想と言葉という乱暴な道具と「そういう感じ」について

 twitterだったかはてな界隈だったかで話題だったのと、以前一話だけ読んだことのある『BUTTER!!!』が面白かったので購入。確か発売直後に買った。
 『BUTTER!!!』を読んだ限り、ものすごく乱暴に極端によくある言葉でまとめてしまえば「思春期の友人関係や異性に対する葛藤を繊細に描く」という感じの人なんだなーと思った。本当に乱暴に一文におさめてしまったけれど、こういう乱暴さは私が一番憎むところで、乱暴に片付けられない複雑な感情について他の人はどう感じるのか知りたくて私は創作物に触れようとするのだと山岸凉子を読んでいても思う。閑話休題
 「乱暴に片づけられない複雑な感情」について描いていることを期待して買ったこの一冊、女性が女性であることについて描かれた短編集で、各話に少しずつ繋がりがあって登場人物が被っている形式。
 3話目のレズビアンの老女と女子高生との関わりを描いた話が一番気に入った。ラストの「永遠に孤独だけど孤独なのは自分だけじゃないしつながらずに生きてはゆけないから終われない それも世界の決まりよ安心でしょう」という台詞。こういうはっきりした台詞を逃げずに言わせてしまうことって勇気がいるんじゃないかなと思ったけど、あざとさを感じさせるところすれすれの痛々しさをうまくまとめて提示することもプロの技なんだろうなあと思った。
 個人的にはこの短編集はよしながふみの「愛すべき娘たち」から連なる一冊なのだけど(そしてもっと遡れば山岸凉子がいると思うんだけど)、自分はいつまでこういう「女性の葛藤を描いた話」(ああこれもまた乱暴なまとめかただ。言葉は怖い)に固執してしまうのだろうか。山岸凉子小野塚カホリ(私が好き、というか執着している漫画家ツートップ)、とくれば「ああそういう感じね」というのがバレバレ。「そういう感じ」の作品を読んで齢を重ねた人に、いつか「そういう感じ」を笑って受け流せる日はきているのだろうか。
 と言いつつ私も「そういう感じ」と向き合い、あるいは囚われ、束縛されながらハイティーンを過ごしいい加減立派な大人と言われる年齢になったのだけど、それでもまだ「そういう感じ」に固執し続けている。
 追記するかも。