愛しあう ジャン=フィリップ・トゥーサン
秋の夜長は読書とブログ というお題があるそうなので。
原題は FAIRE L'AMOUR、英語で言うところのメイクラブ。フランス人作家による日本を舞台にした恋愛小説。
主人公「ぼく」と恋人マリーはフランス人。別れ話をする二人の関係は、「ぼく」が隠し持つ塩酸の小瓶のように危うい。
3.11以前の日本を舞台とするこの小説には、地震が度々登場する。地震に翻弄されつつもすぐに日常に戻ってしまう、あるいは戻ろうと努める周囲の日本人たち。異邦人たる「ぼく」は、そんな彼らを貶めすでもなく珍しがるでもなく、淡々と時を過ごす。
新宿の高層ビル群にあると思しきホテルや、ファッションビルが立ち並ぶ新宿南口の高架上と思しき光景。たくさんの東京が描かれた小説だ。東京という場所に特段思い入れを持たない人でも、読後の東京はきっと今まで見ていたそことは違うものとなるだろう。
エキゾチックジャパンでもなく、未開の地ニッポンでもない日本が、東京がそこにある。
大学受験のために上京し、京王プラザホテルに泊まった時、都庁やビル群の夜景を眺めながら読んだこの本は格別だった。東京は行きたいと思うものではなく、自然と行く場所なのだと思っていた自分にとって、東京を特別な意味のある場所にしてくれた一冊。