sparklersの日記

自己顕示欲と羞耻心と。私に都合のいい私の話。

西炯子 姉の結婚 5

 今連載中の漫画の中では一番続きが気になる漫画かもしれない。掲載誌は月刊フラワーズだけど、単行本派なので待ち遠しかった。以下特にネタバレのない感想。

 舞台は「中崎」とされる地方都市なんだけど、作中の描写は実際の長崎をメインに、百貨店なんかは福岡というか天神あたりも混じっている感じ。

 この漫画を初めて読んだ時、長崎の描写があまりに細かくて驚いた。作者は東京在住のようだけど、長崎に住んでいるか住んだ経験があるのか、あるいは周囲にそういったアドバイザーがいるのかと思ったほど。単に取材をしただけでは描けないような、長崎を熟知した上で良いところを引き出した描写がなされていると思う。

姉の結婚 1 (フラワーコミックス)

 例えばこの1巻の表紙は坂の上に建つ家と階段。左上に建つ家は、階段を上り終えたところにおそらく玄関がある。山の斜面を崩して無理やり建てた家を下から見上げると、この表紙みたく崖の上高くにそびえるように見えるのだ。

姉の結婚 2 (フラワーコミックス)

 2巻。廃墟軍艦島。作中では土佐島。

姉の結婚 3 (フラワーコミックス α)

 3巻。路面電車。背景の建物と斜面に建つ家々の感じでは長崎駅前から諏訪神社前の雰囲気。

姉の結婚 4 (フラワーコミックス α)

 4巻。市街地から港越しに山を眺める感じか。実際の長崎はこんなにたくさんビルはなく、やや福岡も混じってるかも。

姉の結婚 5 (フラワーコミックス)

 5巻。ステンドグラス。長崎には古く立派な教会がたくさんある。もちろん美しいステンドグラスで装飾されている。

 もちろんこれだけではなく、電停の名前やら駅舎やら百貨店やスーパーの名前やら、作中の描写にはこれでもかというくらい長崎が詰まっている。細かいところだと、信号が青になったときの音が「パッポー パッポー」と表現されている。これ、長崎だけかはわからないけど、本当に長崎の信号は「パッポー」という音がするんですよね。この描写には驚きました。

 西炯子作品は『娚の一生』と『姉の結婚』しか読んでいないのだけど、この作者のすごさはとても意識的に少女漫画に徹しているところだと思う。その少女漫画ぶりを好きかと問われると返答に困るけれど。しかし今一番続きが気になり、巧いなあ面白いなあと思う漫画である。『姉の結婚』が『娚の一生』のような単なる王子様パターンで終わるのか、それ以上の凄みや面白さが描かれるのか、とても楽しみ。